日本人の死因の変化から分かること

現代日本人の死因は第1位が悪性新生物(ガン)、第2位が心疾患、第3位が肺炎、第4位が脳血管疾患、第5位が老衰という順番でした。

あなたが健康長寿を目指すなら、私たちをおびやかす病気の正体を知っておく必要があります。日本人がかかりやすい病気も昔と今ではかなり種類が変わってきています。まずは私たち現代に生きる日本人が気をつけておくべき病気について、正しく把握しましょう。

それでは過去の時代の日本人の死因はどうだったのでしょう。死因の変遷を見てみましょう。

日本人の死因の変遷

まずは今からおよそ70年前の戦後間もない1947年(昭和22年)。この年の日本人の死因は以下のようになっています。

1. 結核
2. 肺炎
3. 脳血管疾患
4. 悪性新生物
5. 心疾患

ダントツの1位は結核で、その次に肺炎、脳血管疾患が来ます。

さらに戦前までさかのぼってみると肺炎、胃腸炎、結核が日本人の3大死因でした。
肺炎は細菌やウイルスに感染して肺に炎症が起こる病気です。胃腸炎は細菌やウイルスが胃や腸に感染して起こる感染症です。また、結核は結核菌が感染して起きる病気。このように戦前は多くの日本人が細菌やウイルスの感染によって命を落としていたわけです。現代とはずいぶんと死因が異なることが分かりますね。


確かに現代でもノロウイルスにやられて胃腸炎になったという話はよく聞きますが、だからといってそれが原因で死ぬ人の割合はとても少ないのが現実です。

西洋医学の最大の功績はこのような昔の日本人にとって恐ろしかった数々の感染症をほぼ克服できたことにあると言っていいでしょう。
そして、それによって平均寿命を大きく延ばすことにも貢献しました。このことは乳幼児の死亡率に見てとることができます。

乳幼児の死亡率が大きく下がったことによる平均寿命の延び

厚生労働省発表のデータより日本人の出生数と新生児死亡数および乳児死亡数を見てみましょう。

1900年(明治33年) 出生数1,420,534人 新生児死亡数112,259人、乳児死亡数220,211人
1950年(昭和25年) 出生数2,337,507人 新生児死亡数64,142人、乳児死亡数140,515人
2000年(平成12年) 出生数1,190,547人 新生児死亡数2106人、乳児死亡3830人
2016年(平成28年) 出生数976,979人 新生児死亡数874人、乳児死亡1928人

2016年は概数ですが、1899年以来の記録の中で初めて出生数が100万人割れしそうです。戦後すぐの1950年には200万人以上生まれていたので隔世の感がありますね。ちなみにですが、2005年(平成17年)に日本で生まれた人の数が106万2530人に対して死亡した日本人の数が108万3796人となり、初めて死亡数が出生数を上回りました。2006年に一瞬増加に転じたもののそれ以降、現在にいたるまでどんどん人口は減る一方です。まさに少子高齢化といったところです。
それはともかく1900年や1950年といった過去の時代と現代の2016年を比較すると、新生児死亡数と乳児死亡数が激減しているのが分かります。
昔と今では出生数も違うのでこれを分かりやすく死亡率で表示します。また、合わせて死産率も記載しました。

      新生児死亡率 乳児死亡率 死産率
1900年  79.0       155   89.1
1950年  27.4       60.1    84.9
2000年   1.8       1.8     31.2
2016年   0.9       2.0     21.0
(新生児死亡率および乳児死亡率は出生千人に対する率)
(死産率は出産千人に対する率)

以下は死産数と周産期死亡率の値です。

    死産数         周産期死亡率(出生千対)
1900年 137987人          -
1950年 216974人    46.6
2000年     38393人         3.8
2016年     20938人       2.4
(周産期死亡率とは妊娠満28週以後の死産数に早期新生児死亡数を加えたものを出生数で割った死亡率)

このように昔は生まれてすぐや乳児のうちに亡くなる人がとても多かったのです。
1900年ですと4人に一人くらいの人が幼いうちに亡くなっていました。それが1950年では11人に一人くらいに減り、2016年では344人に一人くらいの割合になりました。


日本人の平均寿命が長くなったのは長生きする人が多くなったのも事実ですが、それ以上に赤ちゃんや乳児が死ななくなったことが大きく寄与しています。

死因から分かる現代と昔では異なる健康法

さて、昔の日本人の死因は肺炎、胃腸炎、結核などの感染症が多かったことが分かりました。また、昔は新生児や乳児の死亡率がとても高かったことも確認できました。でも現代では感染症による死亡率は激減し、また、幼くして亡くなる人もたいへん少なくなりました。これらはいずれも抗生物質や抗菌剤など、人間をおびやかす細菌に対して有効な薬が開発されたことが大きいでしょう。また、国民の衛生観念が発達し、生活空間がきれいになったことも影響しています。さらには、国が豊かになり豊富な食べ物が手に入るようになって食生活が改善しました。その結果、人々の栄養状態がよくなったため、病気に対する抵抗力がついたことも事実です。したがって、昔の人の健康法というものを考えるとするならば、衛生と栄養に気を配り、感染症を予防することが何よりの健康法だったと言えるのではないでしょうか。

しかし、感染症をほぼ撲滅した現代は、病気で死ぬ人が少なくなったバラ色の世界になったでしょうか。幼くして亡くなる人が少なくなったのは確かに喜ばしいことです。しかし、感染症で死ぬ人が少なくなるのとは反対に、ガン、脳血管疾患(脳出血、脳梗塞など)、心疾患(心筋梗塞など)で亡くなる人が激増しました。
医療の世界では日々、研究が進められ、製薬会社により数多くの薬が開発されてきていますが、これらの病気を克服できたとはとても言えない状況です。感染症とは違って、現代医学はこれらの病気にはかなり手を焼いているように思えます。
私たちは昔とは違い、いわゆる生活習慣病をターゲットとした新たな健康法を実践していく必要があるのです。
まずは生活習慣病に対する理解を深めていきましょう。

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