人間の寿命ははたして何歳?

日本人の平均寿命については、今から70年前の1947年に戦後初となる調査が行われ、男性が50.06歳、女性が53.96歳でした。しかし、今や2016年時点では男性が80.98歳、女性が87.14歳となりました。ずいぶん長生きするようになりましたね。いったいどこまで寿命は延びるのでしょうか?寿命が延びる理由や、寿命の限界などなど気になる寿命の秘密についてお話します。
あなたの寿命を延ばすのに役立つかも?

日本人の平均寿命の変遷

日本人の寿命は過去どのような変遷をたどってきたのでしょうか。
まずは縄文時代。ある推計では平均寿命は14.6歳だったといいます。「えっ、成人になっていないじゃん」って思うかもしれませんが、これはもちろん当時の乳幼児の死亡率がめちゃめちゃ高かったせい。でも成人できたとしてもせいぜい30歳くらいの年齢までしか生きられなかったようです。

江戸時代になっても平均寿命はだいたい30~40歳だったと考えられています。ちなみに江戸時代の全将軍15代の寿命の平均は51歳。トップは15代将軍慶喜の77歳、次が初代の家康75歳。最も時代が古い家康が2位とはさすがです。かなりの健康オタクだったとのうわさもあります。

その後、明治時代になって生命表が作成されるようになり、正式に平均寿命が発表されるようになりました。その第1回生命表(1891~1898年)では日本人の平均寿命は、男性42.8歳、女性44.3歳でした。平均寿命はその後ずっと40代を推移、そして戦後の1947年になってやっと50代になりました。その後は急速に延び、世界保健機関(WHO)が発表した世界保健統計2016によれば日本人の平均寿命は男女平均で83.7歳となりました。

日本人の平均寿命が世界的に見て高い理由

今や世界に誇る長寿国家となった日本ですが、なぜこんなに平均寿命が延びたのでしょうか。それにはいくつかの要因が考えられます。
まず、その国の平均寿命を延ばすには乳幼児の死亡率を下げなければなりません。生物的に最も弱いのがこの時期ですからね。ですから昔は「七つ前は神のうち」と言われ、7歳になっていない子供の運命は神がにぎっているとされました。そして、7歳になって晴れてその無事を祝うことができたのです。そういうこともあり七五三を祝うようになったみたいです。

日本は戦後、衛生状態がよくなり医療技術が発達し、国民皆保険で等しく医療サービスが受けられる国となっていきました。そして世界で見ても乳幼児の死亡率はかなり低くなりました。

日本人の寿命が長いその他の理由としては、健康によいと言われる生活習慣を持っていることが挙げられます。食事でいえば和食の習慣。たとえば味噌、納豆などの発酵食品や魚介類を主に食べてきたことが長寿に寄与していると考えられます。


お風呂に入る習慣も長寿に良いと考えられます。たとえば、湯船につかると筋肉や関節は柔軟になります。また、体中の血行がよくなり、老廃物を流してくれます。体を温めることが免疫力を上げるのにも役立ってきた可能性があります。

このような健康によいと言われてきた日本人の食習慣や生活習慣も時代の流れの中で次第に変わりつつありますが、こういったよき習慣は意識して続けていきたいものですね。

なぜ人間の寿命が延びるのか、その理由

ところで人間の寿命がなぜ延びるのか不思議な感じもします。生物の寿命って生物ごとに決まっていて昔も今も変わりませんよね。でも人間だけが寿命を延ばしてきています。もちろん、さきほどお話ししたように衛生状態の改善で乳幼児の死亡率が激減したとか、食糧生産の向上等によって餓死する人がいなくなったりといったことが大きいのは事実でしょう。
でも、もしかしたら人類はいまだに生物学的な寿命まで生きることができていないのでは?という感じもします。つまり多くの人が本来もっと生きられるのに、それ以前に病気になって死んでしまっているのではないかと考えることも可能ではないでしょうか。


自然界の動物たちはあまり病死しないという意見もあります。少なくとも人間のように動脈硬化や癌、心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病、肝硬変等の数多くの病気で悩んでいる動物はいないでしょう。

本来、人間も病気をせず、老衰で死ぬのが自然ではないでしょうか。理想的には死ぬ直前まで元気に生きて、ある日ころっと死ぬのが理想のように思います。いわゆるピンピンコロリというやつですね。
そういう観点からいくと人間の本来の寿命ってどれくらいなのでしょうか。

人間の本来の寿命

人間の本来の寿命はどれくらいなのでしょうか。また、最高何歳くらいまで人って生きられるものなのでしょうか。科学的にはまだ分かっていないのが現状です。というか他の生物の寿命にしても経験的に分かっているだけでしょうけれども。
でもいくつかの方法で人間の寿命を推定する試みはなされています。

脊椎動物の寿命の法則からの推定

 

実は脊椎動物の寿命にはある法則があります。その法則とは脳が成熟するまでの年数に5を掛けたものがその生物の寿命というもの。するとヒトの脳が成熟するのが25年なので、それに5を掛けた125歳が人間の寿命ということになりますね。
これが事実とするとほとんどの人が寿命を全うできていない!?ということになります。

ヘイフリック限界とテロメア説

私たちを構成する細胞は無限に増殖できるわけではなく、限界があるということがレオナルド・ヘイフリック教授によって発見されました。そのメカニズムとしてはテロメア説が提唱されています。テロメアとは染色体の両端に存在する部分のことで、分裂するたびに短くなっていきます。このテロメアDNAがおよそ半分くらいの長さまで短くなると、それ以上分裂できなくなって、ヘイフリック限界が訪れるということが分かりました。だからこのテロメアは「生命の回数券」と呼ばれたりします。この細胞分裂の上限は50回程度とされていて、年齢に換算すると120歳くらいということになります。なお、このテロメアを長くすることができるテロメラーゼという酵素が発見されています。どんどん無限に増殖することが可能なガン細胞ではこの酵素の活性が高まっていることが多いそうです。

統計による寿命の推計

ニューヨークのアルバート・アインシュタイン医科大学の研究者らが「人間の寿命は115歳が限界」という研究結果を英科学誌ネイチャーに2016年に発表しました。それによると、人間の平均寿命は確かに年々延びていますが、100歳を超える人たちの寿命の延びのペースが落ちてきているとのこと。現実に105歳以上の人が増えていないそうで、115歳くらいが限界だろうと試算されました。

また、2017年8月31日にはオランダのティルブルフ大学とエラスムス大学ロッテルダムの研究チームも寿命に上限があると発表しました。オランダ人の約7万5千人のデータを分析したところ、女性の寿命の上限は115.7歳、男性が114.1歳になるという結論を出しました。

う~ん、どちらの研究チームもほぼ同じ値となっていますね。

寿命の限界

以上のように科学者たちの研究によると人間の寿命は120歳くらいということになりそうです。実際、長寿のギネス記録は122年と164日間生きたフランス人女性のジャンヌ・カルマンさんです。カルマンさんがなくなったのが1997年ですので、もう長いことこの記録は打ち破られていません。何か科学的なブレイクスルーがなければ自然の状態では120歳くらいが限界なのかもしれません。

ギネスの長寿世界記録はジャンヌ・カルマンさんの122歳。しかし、過去の歴史にはそれをはるかに超える驚くべき長寿を誇った人がいたと言います。その人生をふりかえりつつ長寿の秘密を探っていきましょう。健康なセンテナリアンを目指すために。

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