健康寿命を延ばすには高齢になってから転倒・骨折に気をつけることがとっても重要。
そこで、ぜひ知っておきたいのがロコモティブシンドローム。これについて分かりやすく説明します。
ロコモティブシンドロームとは何か
ロコモティブシンドローム(略称はロコモ)とは加齢による運動器の障害により日常の動作に問題がある状態のことです。これがひどくなると要介護になったり寝たきりになったりします。ここで「運動器って何ですか?」という疑問がわいたかもしれません。確かにあまり日常では使われませんね。私たちの身体にはいろいろな機能があり、それぞれを担当する内臓や構造を持っています。たとえば、酸素を取り入れ二酸化炭素を排出するという呼吸機能を有する肺や気管。これらを呼吸器と言います。また、酸素や栄養を各細胞に運び、二酸化炭素や老廃物を受け取る血液を、体のすみずみまで流して循環させる心臓や血管のことは循環器と呼びます。胃や腸は食物を消化吸収する役目を担った消化器ですね。私たちは咳が出たり呼吸に異常があると呼吸器科に、心臓や血管の障害が疑われるときは循環器科に、胃腸などが不調なら消化器科に行って診てもらいますね。
では聞きなれない運動器とは?これは筋肉や関節、骨、神経など私たちが身体を動かす時に働いているもののこと。これらが衰えたり、異常が生じると立ったり歩いたりの日常動作に支障が出てきます。これがロコモティブシンドローム、日本語では運動器症候群と言います。
ロコモになる原因①-筋肉
私たちの身体は使わないでいると機能が衰えるという法則下にあります。特に加齢に伴って筋肉が委縮してしまうことを廃用性筋委縮症、英語ではサルコペニアと言います。筋肉率は20代が一番高く、年齢を重ねるごとに低下していきます。
特にどこの筋肉の衰えが大きいかご存知でしょうか。答えは下肢。ヒトは脚から衰えていくんですね。また、全身の筋肉の70%は下半身の腰より下にあります。従って、いかに下半身の筋肉を保つかが重要になるわけです。また、男性は女性よりも筋肉量が多いからそれほど心配しなくても大丈夫と思っていたら要注意。加齢による筋肉の減少率は女性よりも男性の方が速いのです。年を取って、たとえ体重が変わっていなくても体脂肪率が上昇している可能性がありますよ。
ロコモになる原因②-骨
さて、寝たきりになる原因として転倒・骨折というものがあるというお話をしました。そこで、高齢で大事になってくるのが「骨」。骨量は成長とともに増え20歳くらいで最大となります。その後はゆるやかに減少していきます。特に気をつけたいのは女性。閉経前後の50歳くらいから急激に骨量が減少してしまいます。実際、骨粗鬆症は女性に多い病気で、患者の80%以上が女性とのこと。
ではなぜ閉経により骨量が減少してしまうのでしょうか。私たちの骨は硬くて不動のもののように見えますが、実は常に新陳代謝が行われ、新しく骨が作られたり古い骨は壊されたりしています。この新生と破壊のバランスの上で骨は維持されているわけです。そして、女性の骨を作るのに大事なのが女性ホルモンのエストロゲンです。このエストロゲンは骨を作る作用と骨からカルシウムが溶け出すのを抑える作用があるのです。ですから閉経によってエストロゲンの分泌が少なくなると骨から溶け出すカルシウムが多くなってスカスカの骨になっていくというわけです。ということで、高齢になってもいかに強い骨を作るかがロコモ防止の一つの鍵になります。
ロコモを防止するには
以上、見てきたようにロコモになる要因として骨量の減少や筋肉量の減少が挙げられます。それではあなたがロコモを防止し、健康寿命を延ばしていくにはどうしたらいいのでしょうか。
(1)カルシウムを取ろう
強い骨を作るにはやはりカルシウムは欠かせません。小魚や大豆製品、海藻、小松菜やチンゲンサイなどの緑黄色野菜、乳製品など、カルシウム豊富な食品を積極的にとりましょう。また、骨と言えばカルシウムというイメージがありますが、実はタンパク質も骨の重要な成分の一つ。先に挙げた魚介類や大豆製品だとタンパク質も同時にとれてよいですね。なお、カルシウムは1日の推奨量は50歳以降では男性で700㎎、女性は650㎎です。でも日本人は世界的にカルシウムの摂取量が少なく、多くの人が推奨量をとれていないのが現実。少し意識してカルシウムをとりましょう。
(2)日光を浴びよう
日光には紫外線が含まれるため敬遠されがちですが、まったく浴びないのも考えもの。骨を形成するのに必要なものがビタミンD。これは食品からもとれますが、それ以外に日光を浴びることで体内で合成されるのです。1日わずかな時間でよいそうですので日光を浴びて強い骨を作りましょう。
(3)運動の習慣を取り入れよう
そしてロコモを予防するのに何と言っても重要なのが運動。高齢になってもそれなりの筋肉を維持し減少を緩やかにするのに必須です。また、運動をすることで骨量を維持したり、骨密度を上昇させる効果も認められています。
その際に意識したいのは脚を中心とした下半身の運動です。先にもお話ししたように高齢になると下肢の衰えが激しくなります。
運動としてまずおすすめなのがウォーキング。外で天気の良い日にウォーキングを行えば日光も浴びることができてビタミンDの合成も期待できますね。
また、室内でもできる運動としてはしゃがんで立つ運動のスクワットが有効です。この運動で太もも全面の大腿四頭筋、お尻の大臀筋、太もも裏側のハムストリングなどが鍛えられます。
黒柳徹子さんは故・ジャイアント馬場さんに教わったスクワットを毎日、寝る前に50回行っているそうです。また、森光子さんも朝75回、晩75回の1日計150回続けていたとのこと。やはり下半身と元気さは比例するようですね~。元気な高齢者目指してがんばりましょう!