「日本人の平均寿命は今年は世界第何位」というように平均寿命は毎年ニュースになるので有名ですが、健康寿命という言葉も最近よく聞かれます。でも健康寿命の正確な意味とか、なぜ健康寿命という概念が提唱されるようになったのかといったことをご存知でしょうか。健康寿命についての定義、健康寿命の地域別ランキングやあなたが今後、健康寿命を延ばしていくために大切なことをお話ししていきます。
健康寿命とは?その定義
健康寿命とはそもそもは2000年にWHO(世界保健機関)が提唱した概念で、「健康上の問題で、日常生活が制限されることなく生活できる期間」というふうに定義されています。つまり介護を受けていたり、寝たきりの状態ではなく、生活に支障のない完全に健康な期間のことですね。逆に言えば、平均余命と健康寿命の差にあたる期間は日常生活に制限のある「不健康」な期間というわけです。
確かに日本人は昔と比べて格段に長生きになりました。でもできることなら、日常的に医療や介護が必要な状態で長生きするよりも、自分の足で立ち、自由に行動できる身体で長生きしたいと誰もが思っていることでしょう。その方がずっと幸せですし、周りの人たちの負担にもなりませんし。では、日本人の健康寿命ってどれくらいなのでしょうか。
健康寿命と平均寿命の差
厚生労働省の発表によると2013年の日本人の健康寿命は男性が71.19歳、女性が74.21歳でした。2013年の平均寿命は男性が80.21歳、女性が86.61歳だったので、平均寿命と健康寿命の差は男性が9.02年、女性が12.40年ということになります。
ということは男性で9年近く、女性では10年以上も不健康な状態、すなわち何らかの不自由を感じながら生きていることになりますね。
この日本人の健康寿命、世界レベルで見るとどのレベルにあるのでしょうか。
日本の健康寿命の世界ランキング
2013年時点の世界188カ国の健康寿命の分析結果をワシントン大学などの健康チームがイギリスの医学雑誌ランセットで発表しています。その結果、男女とも日本が1位でした。男性の健康寿命は71.11歳、女性が75.56歳という結果でした。
健康寿命の計算方法はいろいろあるので厚生労働省発表の数値と微妙に違いますが、いずれにしても平均寿命だけでなく健康寿命も日本は世界に誇れる数値となっているわけです。
健康寿命の都道府県ランキング
さて、世界的に見たら健康寿命が長い日本ですが、日本の中での地域差はどうなっているのでしょうか。現在、公表されている中で最新のものは2013年版のデータです。都道府県別のトップ5は以下の通りです。
トップ5
男性(年) 女性(年)
1. 山梨 72.52 山梨 75.78
2. 沖縄 72.14 静岡 75.61
3. 静岡 72.13 秋田 75.43
4. 石川 72.02 宮崎 75.37
5. 宮城 71.99 群馬 75.27
なんと平均寿命ランキングではトップ5以内に入っていなかった山梨県が男女ともに1位となりました。ちなみに山梨県の平均寿命は男性で25位の79.54歳、女性が13位の86.65歳です。他の県も平均寿命ランキングとは一致しませんね。
一方、ワースト5は以下のようになっています。
ワースト5
男性(年) 女性(年)
43. 大阪 70.46 徳島 73.44
44. 青森 70.29 兵庫 73.37
45. 京都 70.21 京都 73.11
46. 高知 69.99 広島 72.84
47. 徳島 69.85 大阪 72.49
こちらも男性の青森県が平均寿命ランキングでワースト5に入っていたのを除くと平均寿命ランキングと健康寿命ランキングの顔ぶれがかなり違っています。
平均寿命ランキングの場合とは異なりトップ5とワースト5の結果から何か傾向を読み取るのは難しいですね。ただ山梨県と静岡県が男女ともに上位を占めているのが何か意味ありげで気になります。富士山を挟んで北の山梨と南の静岡で地理的にも近いですしね。フルーツが豊富な山梨県とお茶で有名な静岡県。う~ん、それと健康寿命に関係があるのでしょうか。もう少し、情報が欲しいところです。
健康寿命の数値の注意点
先ほど平均寿命と健康寿命の差が男性で9.02年、女性で12.40年というお話をしました。この結果から、「平均で男性で9年、女性で12年近く介護が必要だったり、寝たきりだったりするのかな」と考えた人もいるかもしれません。
実はそれはちょっと誤解なんですね。こういうデータを見る場合、どのように取られたデータなのかが重要です。
この健康寿命を算出するために厚生労働省は国民に対するアンケート調査を行っています。そのアンケートの質問は「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」というものです。この設問に対して「はい」と答えている人を、「健康上の問題で日常生活が制限されて生活している人」ととらえているわけです。ですのであくまでも自己申告であり、主観的なデータにならざるを得ないわけです。日常生活に制限があると言っても決して寝たきりの人や介護を受けている人ばかりではないわけです。
もし、寝たきりでない人や介護を必要していない人だけを「健康上の問題で、日常生活が制限されることなく生活できる」と定義するならば健康寿命はもっと長い値となっていることでしょう。
一応、この点には注意しておいてください。
健康寿命を縮めてしまう要因とは
それでは健康寿命を縮めてしまう要因にはどのようなものがあるでしょうか。
日本では寝たきりになる要因として、まずは脳血管疾患が挙げられます。つまり病気要因ですね。その他、老衰、転倒・骨折、認知症といった要因が続きます。
病気に対しては特に食生活の影響が大きいでしょう。老衰についてはやむを得ない面もあるかと思いますが、防ぎようがあるのが転倒・骨折。確かに高齢者が転倒して股関節や脚を骨折してから動けなくなって寝たきりになるというのはよく聞くところです。これをいかに予防するかが私たちの健康寿命を延ばす上で重要になります。そこで、次に「ロコモ」に対する知識の基本を身につけていきましょう。