日本は世界的に見て平均寿命が高い国ですが、日本の中での地域差はどれくらいあるのかが気になるのではないでしょうか。自分の住んでいる地域の平均寿命はいったいどれくらいなのか、あなたも興味があるかもしれません。それでは平均寿命を都道府県別に見てみましょう。最新版は現在、2010年(平成22年)のものになっています。
トップ5は次のようになっています。
男性 女性
1. 長野 80.88歳 長野 87.18歳
2. 滋賀 80.58 島根 87.07
3. 福井 80.47 沖縄 87.02
4. 熊本 80.29 熊本 86.98
5. 神奈川 80.25 新潟 86.96
トップは男性、女性共に長野県。男性は1990年(平成2年)から1位、女性は2010年(平成22年)に1位となりました。
一方、ワースト5は以下。
男性 女性
43. 長崎 78.88歳 岩手 85.86歳
44. 福島 78.84 茨城 85.83
45. 岩手 78.53 和歌山 85.69
46. 秋田 78.22 栃木 85.66
47. 青森 77.28 青森 85.34
残念ながら青森は男性が昭和50年から、女性が平成12年からずっと最下位が続いています。
県ごとにかなり平均寿命に違いがありますね。このような平均寿命の地域差を分析することで健康長寿へのヒントが見つかるかもしれません。それではいくつかの県を取り上げて健康と寿命の関係を考察していきたいと思います。
平均寿命が1位になった長野県の健康への取り組み
2010年に男女共に平均寿命トップとなった長野県。どのような要因で1位になったのでしょうか。実はこの長野県、昭和40年代には高血圧などが原因として起きる脳卒中の死亡率がワースト1位を記録した県だったんです。実際に1965年(昭和40年)の平均寿命ランキングを見ると、男性が9位、女性が26位と決して高くはありません。寒く雪が降る土地柄、新鮮な野菜が手に入りにくく、野沢菜のような塩分の多い食品が好まれて食べられていました。また、海から遠いため、新鮮な魚を食べる機会にも恵まれませんでした。
そこで、昭和40年代から減塩運動や、冬季の暖房対策(寒いと血圧が上がるため)などの取り組みを開始、野沢菜や味噌汁の塩分濃度を下げる運動を県全体で行いました。1981年からは何と専門の教育を受けた食生活改善推進員が家庭をまわって県民たちに直接減塩指導をしたそうです。ものすごい地道な取り組みで驚きです。
その結果、今ではファーストフード店やコンビニが少ないという環境もあり、野菜の摂取量が全国1位となっています。2012年(平成24年)では1日あたり、男性が379グラム、女性が365グラムの野菜を摂取しています。厚生労働省が健康の増進を推進する基本方針「健康日本21」を打ち出していますが、その中で1日の目標野菜摂取量を350グラムとしていますので長野県は余裕でクリアしていますね。野菜にはカリウムが豊富で、体内にある余分のナトリウムを排泄し高血圧を予防すると考えられていますので、とてもよい成果が出ていると思います。
さらに、2010年(平成22年)のデータでは男性の喫煙率が47都道府県中44位、メタボの人の割合が45位となっており、県民の健康に対する意識が高いことが見て取れます。
それに加えて私が注目しているのが高齢者の就業率が高いこと。2010年(平成22年)時点で高齢者の就業率は26.7%で全国1位なんです。やはり高齢になっても生きがいがあることが長寿にとって大切であることを物語っていると思います。
この長野県の取り組みの成果には個人の健康を考える上でもとても参考になり点がありますね。
平均寿命が最下位の青森県、その原因は?
一方、残念ながら平均寿命が最下位の青森県。男性は1975年(昭和50年)から、女性は2000年(平成12年)から最下位となっています。
それでは寿命に影響しそうなデータを見ていきましょう。喫煙率は男性が全国1位、女性が2位、飲酒率は男性が1位、女性が8位となっています。また、食塩摂取量は男性で2位、女性で5位と高い値となっています。その一方で野菜摂取量(男)は31位となっています。これらの習慣が病気を招いている可能性が考えられますね。
運動関係について見てみますと、歩数が男性46位、女性が41位、25歳以上でスポーツをする人の割合はワースト1位となっています。寒く雪深い環境ですので体を動かす機会が少ないものと思われます。また、その結果、肥満率も高くなっており、男性で4位、女性で2位となっています。また、青森県では子供の頃から肥満の割合が高いのが現状です。そのせいか幕内力士の出身県で最も多いのが青森県なんですね。
以上のことから喫煙者が多く、飲酒量や塩分摂取量が多い一方で、あまり体を動かさず肥満者が多い傾向にあるのが青森県ということになりそうです。
平均寿命にとっても影響する病気について見てみると、大腸がん、糖尿病、腎不全の死亡率が全国で一番高いのです。また、気になる点としては特に働き盛りの世代の死亡率が高い点。たとえば40~49歳の世代では長野県の倍近い死亡率となっています。この世代が亡くなると家族に対する影響がとても大きいので、ぜひとも健康生活を意識してもらいたいところです。
さらに、病気のうち日本人の死因の大きな割合を占めるガンについて調べてみました。国立がん研究センターがん情報サービスが「がんの統計’16」という資料を公表しています。この資料、いろいろなデータが載っていて興味深いのですが、その中に都道府県別のガン死亡率が載っています。これを見ると最もガンの死亡率が低かったのは長野県、そして、最もガンの死亡率が高かったのは青森県でした。長野県が19年連続でガン死亡率が最も低く、青森県が11年連続でワーストを記録しているわけですが、長野県は平均寿命がトップ、青森県は最下位。平均寿命をガンの死亡率だけではもちろん語ることはできませんが、やはりガンにかからなこと、ガンの死亡率を下げることが平均寿命を上げる重要な要因であるということは言えそうです。
沖縄県の平均寿命ランキングが低下した原因は?
沖縄県は昔、平均寿命の長さで有名な県でした。1985年(昭和60年)には男性が全国1位を記録、女性も長い間1位を取り続けていました。1995年(平成7年)には「世界長寿地域宣言」を行ったほど長寿を誇っていました。
しかし、男性はその後どんどんと順位を下げ、2000年(平成12年)には26位となり、「26ショック」と呼ばれ世間を驚かせました。そして、その後も盛り返すことなく2010年(平成22年)は30位となっています。
女性も2010年(平成22年)に、とうとう1位の座から転落、長野、島根に次ぐ3位まで落ちました。男性の30位と合わせ「330ショック」と呼ばれています。
かつて長寿を誇った県の転落は残念なことですが、その要因を分析することで私たちが健康に生きていくためのヒントを見出してみましょう。
沖縄県は魚介類などの食べ物に恵まれ、気候は温暖であり、活動的になれる条件が整っています。冬が厳しく運動量が少なくなりがちな青森県とはこの点で有利ですね。
それなのになぜ平均寿命が他の県に抜かされていったのでしょうか。
詳しく見ていくと実は65歳未満の死亡率が高くなっているのです。その反面、男女ともに75歳以上での平均余命は1位となっています。そうすると比較的若い世代の健康状態に何か秘密を解く鍵がありそうですね。
そこで、死因に注目すると、35歳以上の年代では男女で心疾患、脳血管疾患、肝疾患が全国の中でも多くなっています。この状況からは食生活が気になるところです。
沖縄は伝統的に豚肉をよく食べますが、料理の塩分は決して多くはなく、また、野菜、海藻、魚、大豆などをよく食べるという比較的健康的な食生活を送ってきた県だといえます。
そんな沖縄県でしたが、食の欧米化が他の地域と比べても急速に進みました。その土地柄、アメリカの食事スタイルが広がって高カロリーで高脂肪の食生活が普及していったのです。実際のところ、ファーストフード店が初めてできたのが沖縄でありまして、現在、ハンバーガーショップの人口10万人あたりの店舗数は全国平均が4.2軒であるのに対して、沖縄は8.0件となっています。若い人を中心に沖縄の伝統的な食生活からアメリカ型の食生活に変わっていったことが想像できますね。野菜の摂取量も目標値の1日350グラムには遠く及ばず、特に30代の摂取量が230グラムととても少ない状況です。このような背景から県民の肥満者の割合も全国平均より10から20%も多いという結果になっています。たとえば男性では30代で4割以上、40代、50代では5割以上の人が肥満となっています。また、肝疾患が多い原因としてはやはり飲酒の影響が考えられます。実際、一人当たりの酒類の消費量や人口10万人あたりの居酒屋店舗数は全国平均よりもかなり多くなっています。
まとめ
県全体で食生活を意識して変えて長寿日本一を達成した長野県、一方、食生活の悪化により平均寿命ランキングを大幅に低下させた沖縄県。私たちはこの事実を参考にし、自身の健康を主に食生活から増進し、長寿を実現していきましょう!