2017年7月27日に厚生労働省から2016年の日本人の平均寿命が発表されました。
結果は、男性が80.98歳、女性が87.14歳でいずれも過去最高値の更新です。男女共に世界の中では香港に次いで第2位でした。
健康と寿命は当然とっても関係がありますので、少し詳しく見ていきましょう。
目次
平均寿命と平均余命の違い
まず、そもそも平均寿命とは何でしょうか?
「そりゃ、人が平均何年生きられるかってことでしょ」って突っ込まれそうですが、平均寿命とは正確にはその年に生まれた0歳児の平均余命のことを言います。今回の発表で言えば、2016年に生まれた0歳児の平均余命がいわゆる平均寿命のことであり、それが男性なら80.98歳、女性なら87.14歳ということです。普通、新聞等マスコミで発表されるのはこの0歳児の平均余命だけですね。
マスコミで発表されるのは0歳児の平均余命だけですが、実は厚生労働省からはそれぞれの年齢の平均余命が男女に分けて発表されています。「簡易生命表」というものがそれです。この表では下は0歳から上は105歳~まで1年きざみで発表されていますから自分の年齢の平均余命が気になる方は見てみてくださいね。
「自分は90歳だから平均余命はマイナスかも」なんてもしかしたら思っている方もいるかもしれませんが、ちゃんとプラスの値になっていますからご安心ください。ちなみに90歳の人の平均余命は男性で4.28歳、女性で5.62歳となっています。いわゆる平均寿命の年齢より高くなるのは不思議かもしれませんが、これまで90年間生き残ってきた方の平均余命ですから長くて不思議はないのかもしれません。
平均寿命の伸びの原因
1947年(昭和22年)の平均寿命は男性が50.06歳、女性が53.96歳でした。そして2016年がそれぞれ80.98歳、女性なら87.14歳ですから、30年以上寿命が延びたわけです。原因としてはいろいろあるでしょうが、昔は結核などの感染症で命を落とす人が多かったのも大きいでしょう。その後、衛生観念も高まり、また、食糧事情の改善により抵抗力がついたため、あまり感染症で死ぬ人がいなくなりました。一方、現代では生活習慣病で苦しむ人が多くなり、病気の種類が変わってきていますね。それでも毎年、じわじわと平均寿命が上がっているのは、医療の進歩のおかげと言う面は確かにあると思います。実際、各年齢で前年より平均寿命が延びていますが、その原因として、悪性新生物(いわゆるガン)、心疾患、脳血管疾患、肺炎などの死亡率の変化が平均寿命を延ばす方向に働いていることが数字で表されています。
ただ、将来の死因を見ると、最も多い死因はやはりガン。男性で29%、女性で20%の人がガンで亡くなります。このガンによる死が平均余命を男性で3.71歳、女性で2.91歳押し下げているそうですので、いかにガンにかからないようにするかが大事ですね。
寿命中位数とは
さきほどご紹介した簡易生命表にはさらに面白いデータが載っています。0歳の人が仮に10万人いたとしてその後、各年齢で何人生存しているかを予想した数字があるんです。たとえば男性だと70歳で83344人、つまり83%の人が生存しています。80歳では63%、90歳では28%です。90歳でも3割近くの人は生き残っているんですね。女性の場合は70歳で92%、80歳で81%、90歳で約半数の人が生存しているという予想です。女性は二人に一人が90歳超えしそうなんですね。
ちなみに出生者のうちちょうど半分の人が生存するとされる年齢を寿命中位数といいます。
2016年(平成 28年)においては、男性が83.98歳、女性が89.97歳となっています。二人に一人がこの年齢まで生きるのですからまさに超高齢化社会の到来ですね。
平均寿命はなぜ女性の方が長いのか
2016年の日本人の平均寿命は男性が80.98歳、女性が87.14歳だったので、女性の方が7.16歳長生きです。明治時代でも女性の方が長生きだったそうです。女性の方が長生きなのは日本に限った話ではなく世界的な傾向で、ロシアにいたっては男性が66.0歳、女性が76.4歳となんと10.4歳も女性の方が長生きです。このように世界的に女性の方が長生きになったのは1800年代半ばからと言われています。
それではなぜ女性の方が長生きなのでしょうか。それには以下のようないくつかの要因があるようです。
・生活習慣の違い
一つは生活習慣の違い。男性の方が一般に喫煙率やアルコール摂取量が高い傾向にあります。また、職業も男性の方が危険を伴う仕事に従事する割合が高いです。
・ホルモンの違い
でももっと根本的には生物学的要因が影響していると考えられます。
それはずばりホルモンの違い。
女性ホルモンのエストロゲンには、血圧を下げる効果、LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)の血中濃度を下げる働きがあります。その結果、高血圧や動脈硬化になりにくいのです。だから閉経前の女性は心臓病になりにくいわけです。逆に男性の場合、40歳代から心臓病による死亡率が上がっていきます。
また、もう一つ重要なホルモンがアディポネクチンというタンパク質。これは脂肪細胞から分泌されるホルモンなのですが、動脈硬化を抑える作用が知られており、メタボリックシンドローム、糖尿病、がんなどに対する予防効果が認められています。長寿の女性にはこのアディポネクチンが多いことが分かっています。
このアディポネクチンが脂肪細胞から分泌されるということから、「自分は太っているからアディポネクチンの分泌量が多いのかな」なんて期待される人もいるかもしれませんが、それは残念ながら違います。実はアディポネクチンは内臓脂肪が増えると分泌量が低下してしまいます。ですので男性の場合も内臓脂肪は減らした方がよいのです。
ただし、やせすぎの場合もアディポネクチンの分泌が低下するのでご注意を!
一方、男性ホルモンの代表のテストステロン。このホルモンは行動を積極的にする作用がありますが、極端になると無鉄砲な行動に駆り立てる傾向があります。実際のところ男性の死因として、交通事故や危険行動によるものが女性よりも高いという事実があります。
・基礎代謝量が少ない方が長生きに有利
女性は男性と比べて筋肉量が少なく体脂肪が多いため基礎代謝量が少ないです。基礎代謝とは生きていくために必要な最低限のエネルギーのこと。つまり、女性は少ないエネルギーで効率よく生きていけるため環境の変化に適応しやすく、その結果、長生きしやすいと考えられています。
・結婚、死別、離別、独身の影響
男女とも配偶者がいる人(40歳時点)の平均余命は長くなっています。しかし、男性の場合、死別や離別を経験すると平均余命はかなり短くなります。特に離別の場合は未婚の人よりも短くなってしまいます。一方で女性の場合は死別や離別を経験しても未婚者よりも平均余命は長くなっています。つまり、女性の場合、パートナーがいなくなっても平均余命があまり短くならないようです。おそらく男性の場合、独りになると生活が乱れてしまい不健康になるのでしょう。